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東京高等裁判所 昭和56年(行コ)1号 判決

東京都練馬区旭町一丁目三番七号

控訴人

株式会社タイコウ

右代表者代表取締役

朴洙鎬

東京都練馬区旭町一丁目二番一三号

控訴人

川原道子

右両名訴訟代理人弁護士

戸田等

東京都練馬区栄町二三番地

被控訴人

練馬税務署長

塩田照男

右指定代理人

細井淳久

鳴海悠祐

加藤廣治

塚本晃康

石津佶延

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら訴訟代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が、それぞれ昭和五〇年八月三〇日付でした控訴人会社の昭和四八年九月一日から昭和四九年八月三一日までの事業年度分法人税の更正処分及び重加算税賦課決定処分並びに控訴人川原の昭和四九年分所得税の更正処分及び重加算説賦課決定処分をいずれも取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用及び認否は、控訴人ら訴訟代理人が当審証人川原泰奉の証言を援用したほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がなく、失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決一四枚目裏一一行目の「原告会社」から同一五枚目表二行目の「分担していた。」までを「控訴人会社(原告会社)の営業の主軸をなす品物(いわゆる屑鉄)の仕入、加工、販売等の仕事は一貫して専ら松本が行い、控訴人川原(原告川原)は単に経理事務を分担していたにすぎない(その後昭和五二年九月一二日松本が控訴人川原に代って再び控訴人会社の代表取締役に就任した。)」と訂正し、同一七枚目裏九行目の「同年一〇月三一日には」の次に「前記1のとおり」を加入し、同一八枚目表一〇行目の「採用できず、」の次に「当審証人川原泰奉の証言は右認定を覆すには足りないし、」を加入し、同一九枚目表一〇行目の「前段認定の事実によれば」から同裏七行目の「相当である。」までを「前段認定の事実によれば、控訴人らの代理人松本が本件土地の売買に関し仮装の売買契約書二通を作成する等して所得を陰ぺいしたことが明らかである。ところで、前認定のとおり松本は当時控訴人会社の平取締役であったが、営業の主軸をなす部分は専ら同人が行い、ことに控訴人川原の入院中は全面的にその業務を遂行していたものであるから、松本がした隠ぺい又は仮装の行為に基づいて控訴人川原が控訴人会社の代表者としてその法人税の確定申告をした以上、たとえその時点(昭和四九年一〇月三一日)において控訴人川原が松本のした隠ぺい又は仮装の行為を知らなかったとしても、松本の行為は控訴会社の代表者の行為と同視するのが相当である。けだし、重加算税の目的は、隠ぺい又は仮装に基づく過少申告に対し、特別に重い負担を賦課することにより納税義務違反の発生を防止し、申告納税制度の信用を維持するところにあり、このような制度の趣旨に鑑みれば、会社の代表者自身ではないが会社の営業活動の中心となり、実質的にその主宰者と認められる者の不正行為が存し、かつ代表者がそれに基づき過少申告をした場合には、納税義務者たる会社が重加算税の負担を受けることは法の要請するところであるというべきであろう。」と、同二〇枚目裏一一行目の「ものと認められる。」を「ものと認められるから、松本が鄭月子との離婚に関連して売買代金を過少に仮装したため控訴人川原が同人の所得税確定申告当時売買に関する真相を知らなかったとすることには疑いをさしはさまざるをえない。」とそれぞれ訂正するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 蕪山厳 裁判官 真榮田哲 裁判官 塩谷雄)

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